人物紹介|その生き方を知る

鳥居省三 1925(大正14)年8月1日~2006(平成18)年5月4日

紋別市に生まれ、1927年(昭和2)に釧路管内標茶町磯分内に移住する。本名良四郎。

1941年(昭和16)8月に札幌鉄道教習所専修部電信科を終え国鉄釧路駅に電信係として勤務するが1944年(昭和19)徴兵により三重県鈴鹿の第一気象胼隊に入隊。1945年(昭和20)3月、中国上海近郊の虹橋という陸軍の飛行場に転属し、ここで終戦を迎える。

1946年(昭和21)国鉄に復職。翌年から釧路駅の助役、永田喜千氏からドストエフスキーの『罪と罰』を読むように薦められ、その後ロシア文学にのめり込む。また当時の釧路駅周辺には、佐々木武観、小高志摩など文学界で知られる友人がいて多くのことを学ぶ。同年3月、小学時代の級友何人かと同人誌『黎明』を発行すると同時に、小説を多数書き作品を同誌に発表。翌年『個人』と誌名を変えたが間もなく廃刊した。

その後国鉄を退職し、1948年(昭和23)4月、釧路にある私立太平洋炭礦に勤務。そこで健康保険事務所の仕事を手伝いながら、私立太平洋炭礦図書館の主任である葛城国三氏の指示に従い図書業務も兼務。やがて、葛城氏の異動に伴い図書館業務全般を受け持つこととなる。私立太平洋炭礦図書館はアメリカから移入されたばかりの分類法をいち早く採用したり、小中学生の読書会を結成したことで、当時の道立図書館長金田一昌氏の高い評価を受け全道私立図書館のトップに位置づけられた。

1951年(昭和26)太平洋炭礦を退職、市立釧路図書館に勤務する。1953年(昭和28)6月図書館に通っていた石田英子と、6年の年月愛を育んだすえ結婚。同年9月北海道学芸大学で図書館司書資格を取得。翌年長女奈津子、2年後に長男和比徒が誕生する。1966年(昭和41)市立釧路図書館長となる。

1968年(昭和43)釧路市は開基百年を迎え、その記念事業の窓口である事務局長に起用される。その後1971年(昭和46)釧路市市民室次長に、翌年1月釧路市教育委員会文化部長となり、6月には再度、市立釧路図書館長となる。1984年(昭和59)釧路市を退職。

2006年(平成18年)5月4日、脳内出血より逝去。

同人誌・執筆活動

1948年(昭和23)5月、春採ペンクラブを創設し代表となる。翌年4月同人誌『行人』を創刊主宰する。その後1955年(昭和30)11月に二十一号を出して廃刊となる。

1952年(昭和27)釧路の同人誌『北方文芸』の同人となる。同年11月北海文学同人会を創立、原田康子氏の「挽歌」を連載したことで知られる同人誌『北海文学』を創刊、主宰した。

1957年(昭和32)市立釧路図書館が読書週間行事として、『文学座談会』を行う。参加者のほとんどが三十歳未満の文学青年であった。この時、参加者全員の意見として市内の文学団体の提携機関を作ろうという話がもちあがる。翌年、市立釧路図書館で釧路初の文学団体の連合組織である釧路文学団体協議会が発足。また、日本図書館協会の図書館憲章委員会の委員となる。

1960年(昭和35)釧路叢書刊行にかかわり、以降10巻まで編集に携わる。

1967年(昭和42)釧路戦災記録会が創設。のち会長となり、釧路空襲の被害を詳細にまとめた「釧路空襲」3巻及び同改訂版を刊行する。

1993年(平成5)5月、釧路文学団体協議会会長となり平成17年までこれを務める。

受賞

1980年(昭和55)6月文部大臣表彰、1984年(昭和59)10月評論集「異端の系譜」で第18回北海道新聞文学賞、1986年(昭和61)11月北海道文化奨励賞、1988年(昭和63)11月釧路市文化賞と数多くの賞を受賞する。

1993年(平成5)1月、主宰する北海文芸同人会が釧路市文化賞を受ける。

用語解説

行人
春採ペンクラブの機関紙として出した同人誌。私立太平洋炭礦図書館に勤務していたときの主任である葛城国三氏が異動で図書館を去る前に作った文芸グループが“春採ペンクラブ”である。代表が鳥居省三、副代表に浜口竜司、会計に葛城国三、ほか落合信男、佐熊晃、菊地賢憲、皆島環などが参加した。
北方文芸
釧路市内で活躍する“釧路作家クラブ”が昭和24年から発行した同人誌である。ここには戦前から小説を書いていた数名ほか、京谷健、佐々木武観、原田康子らがいた。
北海文学
昭和27年9月北方文芸の同人を脱会した鳥居省三氏が同年11月創刊主宰した。同人に青山静、伊東兎志郎、井上準一、海基幸雄、川崎定平らがいた。昭和30年6月から昭和31年7月まで、のちのベストセラー作品となる原田康子の『挽歌』が連載された。
釧路叢書
釧路市周辺の文化遺産を発掘し、蒐集整理し厳選を経て体系的に刊行したもの。昭和35年12月シリーズ第1巻となる『松浦武四郎蝦夷日誌集』刊行、現在第36巻『釧根台地と釧路湿原の地質』と別巻2巻を含む38巻(うち絶版あり)を刊行している。

参考文献

  • 私の歩いた文学の道. 鳥居省三. 釧路新聞社. 2007, p.21-88, p.183-293.
  • 北海文学. 北海文学同人会. 2006,第93号, p.2-7.
  • 釧路春秋. 釧路文学団体協議会. 2006,p.8-27.
  • 北海文学の軌跡. 永田秀郎. 言海書房. 2003,p.32-35.
  • 釧路の街並み今・昔. 永田秀郎. 北海道新聞社. 2005,p.56-57.

市立釧路図書館3階郷土行政資料室では2009年12月に妻の英子さんが釧路市に寄贈した故鳥居省三氏の所蔵資料6000点のうち約600点を常設コーナー「鳥居文庫」にて公開しています。本棚にお探しの資料がない場合はスタッフにお問い合せください。